歯がなくなった時の治療法
歯を失った時の3つの方法
- ●取り外し可能な義歯
- ●ブリッジ
- ●インプラント
内容によって材料、費用は様々ですが、以上の3つ以外の方法は存在しません。
義歯(入れ歯)やブリッジにはそれぞれ大きなメリットがあります。
ただし、限界ももちろんあって、必ずしも満足のいく治療法がというとそうではありません。
義歯(入れ歯)について
順序を追って考えていきましょう。
まず義歯(入れ歯)には「部分入れ歯」と「総入れ歯」があります。「部分入れ歯」は床(しょう)と呼ばれる合成樹脂の土台と、クラスプという金属製の爪のようなバネが あります。歯肉の土手に床をかぶせ、健康な歯にクラスプをかけて固定します。取り外しができるので、口腔内の清掃はラクにできますが、食後に必ず外して清掃しないと清潔を保てません。
また、一番の苦痛は、口の中に異物が入っているという“異物感”でしょう。口の中は髪の毛1本が入っても感知できるほど敏感です。そこに部分入れ歯が入るのですから、かなり違和感があるのは当然でしょう。
また、合成樹脂の床より歯肉のほうが柔らかいので、噛む時に歯肉にも圧力がかかり痛みが生じます。クラスプがかかっている健康な歯に負担がかかるのはブリッジと同じです。
歯が1本もない状態になると「総入れ歯」になります。総入れ歯はクラスプがなく、ただ歯肉に乗っている状態です。下顎の場合はまだ安定性がありますが、上顎の場合は、2枚のガラスがくっついているのと同じ原理で、唾液で口蓋の粘膜に貼り付いているだけです。固いものを前歯で噛もうとすると、外れてしまうこともあります。また、床が口の奥まで入るので、異物感は強烈です。中には嘔吐感に襲われる人もいます。
そして、入れ歯は毎日使い続けるうちに、歯肉が萎縮したり、顎の骨が吸収して、合わなくなると作り替えなければいけません。
毎日の手入れや作り替えの煩わしさもさることながら、精神的なダメージを受けやすいのではないでしょうか。今まで自分の歯で何でも食べていたのに、ある 日、歯が抜けて入れ歯になってしまう・・・。“年を取ったな”と落胆したり、“人前では恥ずかしくて外せない”と思ってしまうようです。
ブリッジについて
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を土台にして、その間に橋を渡すようにダミーの歯を装着する方法です。
両隣の健康な歯の上部を削り、抜けた歯の代替歯と両側の歯に被せる歯冠上部がつながったものをセメントで接着します。
義歯のように取り外しをしないで、自分の歯のように使用できる点がメリットです。ただし、周囲に丈夫な歯が残っていなければできません。 逆に言うと、一番の問題は健康な歯を削らなければならないということです。歯の表面は人間の体の中で最も硬いエナメル質でできていますが、エナメル質を削ってしまうとエナメル質より柔らかい象牙質がむきだしになり、細菌に侵入されやすい状態になります。さらに人工の歯冠と削られた天然歯の境目はプラークが溜りやすいので、虫歯や歯周病にかかりやすくなってしまいます。
また、健康な歯がブリッジを支えているのですから、負担がかかってきます。
つまり、抜けた1本の歯のために両隣の2本の健康な歯が犠牲になる可能性が大きいということです。
その他、土台となる両隣の歯が虫歯や歯周病になった場合は、ブリッジ全体を外さなければ治療が行えないことも難点の一つでしょう。
インプラント、義歯(入れ歯)、ブリッジのメリット・デメリット
義歯(入れ歯) 保険、自費 |
ブリッジ 保険、自費 |
インプラント 自費のみ |
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費用 | 保険適用のため、安価。 保険外の物もある。 |
保険適用範囲内なら安価。 しかし見た目を良くしたい場合は保険外になる場合がある。セラミックの歯を入れる場合がこれにあたる。 |
保険外。 費用は他の治療に比べると高くなる。 本数や骨の状態に左右される。 |
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他の歯への負担 | ばねを掛けた歯が数年でぐらつき始めばねを掛けた歯も抜歯をすることになる | 両隣の歯を削らなくてはならず悪化させる可能性が高い | 他の健康な歯を傷つける必要がなく負担もかからない |
見た目の違和感 | 見た目の違和感バネが見えるとすぐに入れ歯とわかってしまう。 口を開けると上の入れ歯が落ちることもある。 |
見た目の違和感は少ない。セラミックを使用すればさらに綺麗な仕上がりになるが、インプラントと同じく保険外になる。 | 天然の歯とほぼ変わらない。最終的に被せる人工の歯にセラミックを使用すると、とても自然で綺麗な仕上がりになる。 |
噛む力 | 部分入れ歯なら天然歯の30~40%、総入れ歯なら10~20% | 天然歯の約60%程度(ただしブリッジをかける歯の状態による) | 天然歯とほぼ同じ。 |
噛み心地 | 噛む力が非常に低いため、食べ物は事前に小さく切っておかなくてはならない。また、ガムやお餅などのくっつきやすい物は非常に食べにくい。 噛みあわせる時に痛みが有る場合がある。 |
支えになる歯に問題が無く、適切に作製されていれば、噛み心地は天然の歯とそれほど変わらない。 | ほぼ天然歯と同じ噛み心地。 |
味覚 | 熱を感じにくいため、味を感じにくい。総入れ歯などでは全体が歯肉で覆われているため、さらに味が感じにくい。 | 特に天然歯と変わらない。 | 特に天然歯と変わらない。 |
顎の骨の吸収 | 歯を失った部分から『骨吸収』が始まり、顎の骨がやせていく。 | こちらも同様に歯を失った部分から骨吸収が起こる。 | 骨吸収を防ぐ。顎の骨が痩せない。 |
治療期間 | 治療期間単純なものなら短期間で済む。 | 単純なものなら短期間で済む。 | 単純なブリッジや入れ歯よりは治療の期間がかかります。 |
治療後の問題 | 歯肉は柔らかく変化しやすいため、時間が経つと合わなくなることが多くある。その度に調整が必要。 | 歯肉の状態によっては作り直しになる場合がある。隣の歯を削らなくてはならず、削った歯が虫歯になってしまうと全てやりなおさなくてはならない。 | 一度インプラントと顎の骨が結合すると、非常に安定性がよい。定期的なメインテナンスが必要。 |
耐用年数 | 約7~8年。歯肉がやせて合わなくなっていくことが多い。 | 平均8年程度と言われる。ただし、顎の骨のやせかたにより変わる。 | メインテナンスを怠らなければ約30年でももたせることが可能。歯周病に気をつける必要がある。 |